WE LOVE 矢作川


椿 隆明


  • 鮎釣り師

鮎釣り歴35年。2016年栃木県那珂川で行われた、鮎釣りの全国大会で第3位という成績を収めた全国トップクラスの鮎釣り名人が豊田にいます。


忘れられない、初めて釣った時の衝撃


鮎釣りとの出会いは中学生の時ですね。
鳥取の田舎で通学路に川があり、時期になると鮎釣りをしているおじさんがいる風景でした。
川が近くにあったので、鮎以外の釣りはそれまでにも経験していました。

ある日、鮎釣りのおじさんをずっと見ていたら、そのおじさんが「そんなに見ているなら降りてきてやってみろ」と誘われました。

初めて持つ鮎釣り専用の竿。
そんな初めての私の竿に、今まで味わったことのない強い魚の引きが!
あの時釣り上げた鮎の衝撃が今も忘れられないですね。

20cmあるかないかのサイズの魚なのに、とにかく引く力がものすごく強いんです。
それまで釣っていた鮎以外の魚とは全く違うものでした。
もうあの瞬間から虜になってしまいましたよ。

また鮎独特の、おとりをつけて喧嘩をさせてひっかけるという、テクニックのいる釣りの仕方も他の釣りには無いもので、面白い!と思いましたね。


仕事で豊田に越して来た後は、しばらく釣りから離れていたのですが、いつしか川に戻ってきました。
この中部地区は川も多く鮎釣りも盛んで、鮎釣りの技能の高い人がたくさんいるんです。
そういう上手い釣り師を見ていて、「自分も同じように釣りたい」と思うようになって、鮎釣りの競技の世界に入っていきました。

ただ、大会でも、元気な魚を楽しく釣りたいと思っているだけで、競技という意識はあまりないんです。
鮎釣りをしていると仲間もたくさんできます。
豊田市にも地区ごとに釣りクラブがあって、その中から上手い人を全国大会に向けて選出するといったこともしています。

ですが年々、鮎釣り人口は減少傾向にあります。
私たち鮎釣り師としても、様々なイベントを通じて気軽に鮎釣りを体験できる機会を今後増やしていきたいと思いますので、ぜひ一度体験してその楽しさを感じてほしいです。

幼いころの私が体験したあの衝撃を、今の子供たちにも味わってほしいですね。


川の現場の見張り番に


毎年釣りをしていると川の変化は感じます。
矢作川で鮎釣りの盛んだった15年前とは川の様子も随分変わっています。

先日行われた全国大会の会場、那珂川は北関東屈指の清流、鮎の漁獲高日本一です。
ですが、その川でさえ、10~15年前の矢作川を見ているような感覚がありました。

川底は外からは見えませんが、私たち釣り人は、その川底の変化を感じとっています。
川底の状況から、今後、この川がどうなっていくかが分かってきます。

私自身も自然と、釣りだけでなく矢作川周辺の環境についても考えるようになりました。
そして、そうした「川の保全」を行なっていく中で、新たな出会いもたくさんありました。

漁協をはじめ、様々な市民、団体の皆様のおかげで矢作川には天然鮎が復活しました。
今後もそれを保護し、鮎がすみやすい環境づくりを進めていかないといけないと思います。

川はそこで遊ぶ人がいて、川を近くに感じることで変化に気づき、川と関わることで川のことを考えるようになります。
その変化に気づけるのが釣り人でもあるので、私はこれからも川の現場の見張り番でありたいと思います。